TOPICS
前回の記事:「めっき」って何だろう? ~種類と仕組み編② 電気めっき~
無電解めっきは前回紹介した電気めっきとは異なり、電気を使わずにめっき液の化学反応を利用してめっき被膜を形成する技術です。
電気を使わないため、電気を通さないプラスチックなどの素材にもめっきをすることができます。
プラスチックめっき処理品
無電解めっきのメリットとしては、めっきに均一性があること、複雑な形状のものにもめっきができること などが挙げられます。
逆にデメリットは、表現できる色の種類が少ないこと、処理コストが高いこと、処理温度が高くめっき液の管理が難しいこと などがあります。
無電解めっきは、処理の方法によってさらに「置換めっき」と「化学還元めっき」に分けられます。
置換めっきとは、簡単に言うと、めっきをしたい製品(金属)の表面を溶かし、そこにめっき液中の金属を付着させてめっき被膜を形成する手法です。
製品の表面にめっき液が接していなければ反応が進まず、製品全体にめっきがついた時点で反応が終わってしまうため、めっき被膜を厚く形成することはできません。
逆に言えば、常に一定の厚さのめっき被膜を得られる手法でもあります。
化学還元めっきとは、化学還元剤というものを用いるめっきです。
還元とは物質が電子を受け取ることです。(逆に物質が電子を失うことを酸化と呼びます)
化学還元剤とは、めっき液中の金属イオンに電子を渡す働きを持つ物質のことです。
金属イオンは電子を受け取るとイオンから金属に戻ります。
この反応が、めっき液からめっき被膜が形成される際の基本的な原理になります。
化学還元めっきはさらに「非触媒型」と「自己触媒型」の二種類に分けられます。
触媒とは、それ自体は変化しないものの、めっき液中での反応を活発にさせる性質を持った物質のことです。
非触媒型はその名の通り触媒を使わずにめっき処理を行う手法です。
代表的な例は鏡の製造に使われる銀鏡反応です。
鏡はガラスの板に薄い銀の膜をつけて作られるのですが、その膜の形成に銀鏡反応という原理が用いられています。
銀鏡反応では、銀イオンを溶かした液に還元剤を入れると、銀イオンが還元剤から電子を受け取り、固体の銀ができます。
しかしこれは品物の表面だけでなく液全体で反応が進んでしまいます。
また、液全体の反応が終わるとめっきの反応も止まってしまうため、得られるめっき被膜の厚さには制限があります。
自己触媒型は、めっきの金属自体が触媒になるめっきです。
めっきの膜がめっき液中の還元剤というものに影響し、電子を放出させます。
その電子と金属イオンがくっつき、さらにめっき被膜が作られ、その膜が影響してまた還元剤が電子を放出し…… と反応が続いていくため、還元剤がある限りは、時間をかけるほどめっき被膜は分厚くなっていきます。
この処理方法は、置換めっきや非触媒型と比べて厚いめっき被膜が得られることが大きな特徴となっています。
加えて、めっき液に安定性がある、反応に持続性があるといったメリットも持っていることから、工業分野で多く使われる技術となっています。
今回は湿式めっきの一つである無電解めっきについて詳しく紹介してきました。
無電解めっきの特徴をまとめると以下の通りです。
過去に掲載しためっきの仕組みと種類編①で、めっきは「湿式めっき」と「乾式めっき」に大別されることをお話ししました。
湿式めっきについての説明は今回で終わりとなります。
次回からは乾式めっきについて説明していきます。
「めっき」って何だろう? ~種類と仕組み編③ 無電解めっき~ 終わり