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「めっき」って何だろう? ~種類と仕組み編⑦ 陽極酸化処理~

2023-11-10

前回の記事:「めっき」って何だろう? ~種類と仕組み編⑥ DLC~

陽極酸化処理(アルマイト)とは

 

陽極酸化処理(以下、アルマイト)とはアルミ素材に対して用いられる表面処理技術の一つで、めっきとは別の技術です。

「『めっき』って何だろう?」というタイトルの当コラムですが、弊社では陽極酸化処理も行っていますので、今回はこの陽極酸化処理について説明させていただきます。

 

アルマイトの特徴

陽極酸化処理(アルマイト)とは「アノダイズ処理」とも呼ばれており、日用品から航空機部品まで様々な分野で使用されています。

例えばカメラ用部品やスポーツ器具部品、調理器具など、アルミ製の製品であれば幅広く適用することができます。

耐摩耗性や耐食性に優れ、様々な色や質感を持った被膜が形成できることが特徴です。

 

アルマイトはサビの仲間!?

アルマイトは、アルミの表面に酸化被膜と呼ばれる膜を作る表面処理技術です。

酸化被膜とは、金属の表面が空気中の酸素と結びつくことで作られる物質(酸化物)です。

赤いサビの浮いた鉄を思い浮かべてみてください。

あのサビも鉄と酸素が結びついた酸化物であり、原理としては酸化被膜と同じものです。

 

しかしアルミの酸化被膜の性質はサビとは全く異なっています。

見た目は汚い赤茶色ではなく白色、表面を薄く覆うように発生し、アルミ本体をさらなる腐蝕から保護するようになるのです。

アルミがサビに強いと言われるのはこのためです。

 

放っておいても酸化被膜を作るアルミですが、自然にできる被膜はおよそ0.01μmにも満たず、非常に薄くて脆いのです。

厳しい環境でもアルミ製品の耐食性を高く保つため、アルマイト処理は必須の技術となっています。

 

アルマイトのメリット・デメリット

アルミの表面を酸化させて被膜を形成するアルマイト処理ですが、メリットは以下の通りです。

🔵 アルマイトのメリット

  • ・耐食性が高い(腐食しにくい)
  • ・高硬度(硬い)
  • ・絶縁性をもつ(電気を通さない)
  • ・耐摩耗性が高い(すり減りにくい)
  • ・熱伝導率が低い(熱を通しにくい)
  • ・カラーバリエーションの自由度が高い

 

しかしこれらのメリットも、使用する環境や方法によってはデメリットとなってしまう場合があります。

 

🔵 アルマイトのデメリット

  • ・割れやすい
  • ・熱に弱い

 

アルマイトの被膜は硬くてさびにくい代わりに柔軟性に乏しいため、折ったり曲げたりすると割れてしまいます。

また、100℃以上の高温環境に置かれた場合にも、アルマイト被膜はひび割れたり剥がれたりすることが多いです。

これは、素材であるアルミニウムは金属のため熱で膨らむのに対して、アルマイト被膜はアルミニウムよりも膨らみにくく、素材の膨張に耐えられないからです。

 

アルマイト被膜の作り方

アルマイト処理では電気を使って人工的にアルミを酸化させることで被膜を形成します。

電極に電気を流すと、陽極側にセットされた被処理物(アルミ製品)が電子を放出してアルミニウムイオンとなり、その電子が陰極側へ移動します。

また、処理液中で水が水素イオン(H+)と酸化物イオン(O2-)に分解します。
(この時、陰極へ移動してきた電子が水素イオンと結合し、水素が発生します。)

そして酸化物イオンとアルミニウムイオンが反応することで、製品の表面に酸化被膜(Al2O3)が形成されるという原理です。

 

薬品に品物を浸して電気を流すというやり方はめっきとよく似ていますが、めっきとアルマイトには大きく二つの違いがあります。

一つ目は電気のかけ方の違いです。

めっきは品物を陰極(-極)に接続するのに対しアルマイトでは陽極(+極)側に接続します。

このため、めっきとアルマイトでは電気のかけ方が逆といえます。

 

電気めっきについての記事はこちら
 「めっき」って何だろう?~種類と仕組み編② 電気めっきの特徴と仕組み~

 

二つ目の違いは、アルマイトには「封孔処理」という工程が必要な点です。

アルマイト被膜には目に見えないほどの小さな穴が無数に開いているため、この穴を塞ぐための処理(封孔処理)が行われます。

この処理により、アルマイト被膜の耐食性は格段に高くなるのです。

 

アルマイトの種類

アルマイト処理は被膜の色や硬度などによっていくつかの種類があります。

🔵 白アルマイト

アルマイトのスタンダード。
アルマイトといえば基本的にこれを指します。
家庭や工場で使う道具に装飾や防食のために施すもので、厚さは5~10μm程度が一般的です。
着色などを行わないため、アルミ本来の色である白っぽい色の被膜ができます。

 

🔵 カラーアルマイト

赤から紫、白から黒までカラフルに着色された被膜です。
アルマイト被膜の細かい穴に着色料を吸着させて色をつけます。
着色料の濃度や温度、被膜の厚みにより色味が変化するため、多彩な製品をつくることが可能です。

 

🔵 硬質(ハード)アルマイト

耐摩耗性を高めたい場合におすすめのアルマイト被膜です。
厚みは数10~100μmと、分厚くて硬い被膜です。
耐衝撃性にも優れるので飛行機や自動車などに用いられます。

 

 アルミ以外への陽極酸化処理

陽極酸化処理は基本的にアルミ素材へと行うものですが、当社ではチタン素材に対する処理も行っています。

こちらは着色料は使わず、チタンの干渉膜によって様々な色調を表現しています。

耐食性が高く人体への影響も少ないことから、医療用インプラント製品などに使用することができます。

 

まとめ

今回は陽極酸化処理について紹介しました。
主な特徴は以下の通りです。

陽極酸化処理の特徴

  • ・アルミ素材の表面を酸化させて被膜を形成する
  • ・耐食性・耐摩耗性・硬度などに優れ 様々な色が表現できる
  • ・陰極側で反応が起こる電気めっきとは異なり 陽極側に被膜が形成される

 

次回、めっきの種類と仕組み編 最終回です。
第二回の冒頭で触れた「樹脂にめっきをするための特殊処理」について紹介します。

「めっき」って何だろう? ~種類と仕組み編⑦ 陽極酸化処理~ おわり