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「めっき」って何だろう? ~種類と仕組み編⑧ プラスチックめっき~

2024-01-24

前回の記事:「めっき」って何だろう? ~種類と仕組み編⑦ 陽極酸化処理~

プラスチックめっきとは

 

プラスチックめっき(樹脂めっき)とは、プラスチックを母材とするめっきのことです。

これまではめっき技術の違いによってめっきを分類し(湿式・乾式めっき、電気めっきなど)紹介してきましたが、今回のテーマであるプラスチックめっきは「プラスチックに対して施すめっき」のことです。

 

プラスチックめっきの用途とメリット・デメリット

プラスチックは 軽い・丈夫・加工しやすい・安い といった性質を持つことから様々なものに使われており、現代の生活には欠かせない材料です。

あらゆる場面で大活躍のプラスチックですが、電気を通さないため金属の代わりとして使用することはできません。

また、見た目がチープになりやすいといった欠点もあります。

しかしそれらの欠点は、プラスチックにめっきを施すことによって克服できるようになります。

 

 🔵 プラスチックめっきのメリット

  •  ・プラスチックの軽さと金属の機能性を両立できる
  •  ・プラスチックに高級感のある外観性を付与することができる

 

 

めっきによってプラスチックに金属の被膜を付けることで、導電性(電気を通す性質)が付与されます。

このような用途で使われるものとしては、電子機器の基板などが挙げられます。

さらにプラスチックめっきは、金属光沢による高級感が得られるため装飾目的でも多く活用されています。

これによってプラスチックを金属部品の代わりとして使用できるようになるため、金属部品を使用した場合と比べて商品の軽量化を図ることなどが可能です。

例えば自動車部品やアクセサリー類、腕時計部品などの他、家具や家電、生活雑貨など、身近にある大小様々なものに使用されています。

 

腕時計の内装部品

 

自動車の外装部品

 

またプラスチックめっきは、塗装など他の表面処理と比較して仕上がり(品質)が安定しやすいという特長もあります。

このように、プラスチックめっきは軽さ・機能性・外観性・安定性を併せ持つ汎用性の高い技術となっていますが、一方で欠点もあります。

 

 🔵 プラスチックめっきのデメリット

  •  ・処理できるプラスチックの種類に限りがある
  •  ・金属と比較して傷がつきやすい

 

プラスチックめっきには、強酸性・強アルカリ性の薬品を使用した処理や高温(60℃前後)での処理を行う工程があります。

そのため、プラスチックの種類によっては変形してしまい処理ができません。

現在主にプラスチックめっきで採用されているのはABS樹脂と呼ばれる種類ですが、それ以外に関しては使用できる種類の選択肢が限られてしまうということが欠点の一つとなっています。

 

ABS樹脂のめっき処理品

 

また、プラスチックは金属と比較して柔らかい素材となっています。

プラスチックめっきは金属の被膜自体は厚みがあまりないため母材自体の硬さに左右されやすく、外的な力で変形したり傷がついたりしやすいという欠点もあります。

 

プラスチックめっき処理の工程

≪1.エッチング処理≫

プラスチックめっきでは一番最初にエッチング処理という作業を行います。

エッチング処理とは表面処理技術の一種です。

酸性・アルカリ性の薬品を使用し、素材の表面を溶かして表面の状態や形状を変化させる技術で、めっき以外にも様々な業界で活用されています。

プラスチックめっきの工程では、製品の表面に極微小な凹凸をつくる目的で利用します。

プラスチックの表面はつるつるとしているので、そこにめっきをしてもめっき被膜が密着せず少しの力で簡単に剝がれてしまいます。

しかしエッチング処理をすれば、表面にできた微小な凹凸がめっき被膜とかみ合って剝がれにくい(密着性の高い)めっき皮膜になります。

エッチング処理はめっきの密着性を左右する重要な工程なのです。

 

≪2.キャタリスト処理≫

次にキャタリスト処理を行います。

キャタリスト(Catalyst)とは触媒という意味の英語です。

触媒とは化学反応を活発にさせる物質のことで、プラスチックめっきでは主にパラジウムという金属が使用されています。

キャタリスト処理工程ではエッチング処理でざらざらになった表面にパラジウム触媒を付着させます。

このパラジウム触媒が、この後の無電解めっき工程で反応を促進させ金属皮膜を形成してくれるのです。

 

≪3.無電解めっき≫

続いて無電解めっき処理を行います。

無電解めっきとは、めっき液の化学反応を利用して金属皮膜を形成するめっき方法です。

無電解めっきの詳細はこちら: 「めっき」って何だろう? ~種類と仕組み編③ 無電解めっき~

キャタリスト処理によりパラジウム触媒を付着させた素材を無電解めっき液に浸けると、触媒が作用しめっき被膜が形成されます。

先述したとおりプラスチックは電気を通さないため、まず無電解めっきによってプラスチックの表面をニッケルなどの金属で覆います。

金属皮膜は当然電気を通しますから、この後は通常の電気めっきを施せるようになります。

 

≪4.電気めっき≫

最後に電気めっきを行います。

電気めっきとは電気を利用して金属膜をつくる技術です。

電気めっきの詳細はこちら: 「めっき」って何だろう?~種類と仕組み編② 電気めっきの特徴と仕組み~

 

使用する金属は銅や亜鉛、合金、クロムや金など様々です。

それらをミルフィーユのように何層にも重ねてめっきしていきます。

複数の金属を重ねることで、錆びにくい(耐食性の高い)めっきに仕上げることができます。

弊社では、
無電解めっき(ニッケル) → 下地銅めっき → 硫酸銅めっき → 半光沢ニッケルめっき → 光沢ニッケルめっき → 仕上げめっき(クロムor金or黒スズ)
という順にめっきを重ねています。

十分にめっきを重ねたら、最後に仕上げめっき(クロムや金)を施してプラスチックめっきは完成します。

 

プラスチックめっき処理品

 

まとめ

  • ・プラスチックめっきはプラスチック素材へめっき被膜をつける技術
  • ・金属とプラスチックのメリットをそれぞれ活かすことができる
  • ・エッチング処理→キャタリスト処理→無電解めっき処理→電気めっき処理 という流れでめっきを行う

 

「めっき」って何だろう? ~種類と仕組み編⑧ プラスチックめっき~ おわり

 

以上、これまで8回に渡りめっき技術について説明させていただきました。
めっきの種類と仕組み編は今回で終了です。

めっきに関して、お困りごと・ご相談がございましたらお気軽にお問い合わせください。
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